簡易魚道の見試しで大人の川ガキづくりプロジェクト
愛知川漁業協同組合は、愛知川(えちがわ)を清流として復活させることを目的に川づくりを行う団体です。
本プロジェクトでは、愛知川流域における小さな自然再生の取り組みとして、愛知川支流渋川でビワマスの簡易魚道(※1)の見試し(※2)活動を行います。見試し活動から地域特性を活かした川づくりの技術を蓄積し、向上していきます。簡易魚道によりビワマスが見られる場所をつくり、川に対する市民の興味や関心につなげます。
また、多様な機関と連携・協働できる体制を整えます。愛知川に対する市民の愛着心を高めることや、地域の自然の恵みを守り、育てることを目指します。
本事業の目標
(1)簡易魚道の材料を整え、見試し活動を通して、地域内外の大人の川ガキが育成できてい
る。
(2)事業効果の見える化ができている
・愛知川との関係時間の増加(人数×時間)
・愛知川漁協スタッフの変化(川に対する行動・意識の変化、目的関数の増加)
・魚道の見試し参加者の変化(川に対する行動・意識の変化、ワクワク度の増加)
・協働の川づくりの体制(パートナーシップの多様性)の見える化
ビワマスはおよそ40万年前から独自に進化したと考えられている、古代湖琵琶湖の進化を象徴する世界でもここでしか見ることができない、とても珍しく貴重なサケの仲間です。
愛知川は、河口から30kmも遡上して上流の森林域の渓流で産卵するという原生に近いビワマスの産卵生態が残存する貴重な川です。
このような場所は、もうほとんど残っておらず、愛知川は保全を考える上で最重要河川といえます。
愛知川で生まれたビワマスは、川で5-7cmくらいに成長して、主に5-6月の増水時に琵琶湖に下ると考えられています。
琵琶湖では、水温が低い深い場所で、アナンデールヨコエビやアユを食べながら4〜6年かけて成長し、大きいものは60cmを越えるといわれています。
10〜11月をピークに、雨が降り、増水しているときに琵琶湖から遡上してきます。
そのためビワマスは、別名「アメノウオ」「アメノイオ」などと呼ばれます。
愛知川支流渋川は、毎年秋にビワマスが産卵のために遡上する、近隣の川の中でも珍しい自然渓流です。
一方で、上流300mある堰堤により魚の遡上が阻止され、遡上の環境が十分に備わっていないのも事実です。
本プロジェクトでは、「大人の川ガキ」が手作りで簡易魚道を設置し、その見試し活動を実施、
ビワマスが遡上できる環境をつくります。
一般的に川ガキは、川遊びをする子どもたちや、時間が経つのを忘れて日が暮れるまで川と戯れる元気な子どもたちのことを指していますが、本プロジェクトでは、川に関わる大人も子どもも含めて川ガキと呼んでいます。渋川をビワマスが見られる川として発展させ、子どもと大人の川に対する興味や関心につなげます。
愛知川漁業協同組合では、1950年に設立以降、愛知川に関する様々な河川保全活動を行っています。
また、入漁者増加のために魚が釣れる川に整備することや、漁業活動を通じて人と人が交わる機会を提供しています。
新たな取り組みにも積極的に挑戦し、コロナ禍でも順調に成果を出しています。
2021年度は、渓流魚の入漁者は過去最高を記録し、アユも大幅な入漁者を得ることに成功しています。